あくまで仕事を行う上での話しに限定したいと思いますが、タイトルの通り、『言語化能力というものは今までも重要であったが、AI時代においては益々重要になって行く』というお話しをしたいと思います。

言語化能力はなぜ重要?
完全に一人きりで完結する仕事というものはほぼ存在しないかと思います。ほとんどの場合、仕事を開始するまでに契約が発生するので、まずそこでコミュニケーションが必要になります。仕事を終えた後も、多くの場合、報告や説明が伴いますので、そこでもコミュニケーションが発生します。
文明と隔離された辺境の地に住む民族の狩りにおいても、おそらく緻密なコミュニケーションが必要だと想像します。FIREして、一人きりで無人島で暮らし始めた資産家も、誰ともコミュニケーションせずに暮らし続けることは困難でしょうし、そもそもそのステージに辿り着くまでに数え切れない人達と協働して来たのではないかと推測します。
ということで、コミュニケーションが不要な仕事は存在しないということを前提にしたいと思います。
この上で、コミュニケーションの質に着目したいと思いますが、質とは、即ち両者の言語化能力と理解力の足し算あるいは掛け算と捉えられそうです。
1on1でも、10数名いる会議の場でもいいのですが、それぞれの能力の和または積が質となるので、一人の能力のみではコミュニケーションの質はさほど向上しません。
会議において超優秀な進行役が鬼神の動きで仲介役を担う場合は、ある程度コミュニケーションの質を担保できるかもしれませんが、おそらくレアケースです。多くの会議の品質は、15分ないし30分で終わる話しを2時間しているといったレベルです。
言語化能力よりも理解力の方が必要なんじゃ?
と、思われる方も少なくないかもしれません。が、どちらがより重要かと言うと、やや言語化能力かなと思います。
コミュニケーションにおいては、乱暴に言えば、言語化能力は攻め手側に必要な能力であり、理解力は受け手側に必要な能力です。どちらかがゼロであったら、そもそもコミュニケーションを取れませんが、、
このため、言語化能力は能動的なシーンで必要であり、理解力は受動的なシーンでより必要となります(「理解力がなきゃ言語化もできないだろうが」というツッコミは一旦スルーします)。
で、なぜ言語化能力の方がやや重要なのかと言うと、人生において能動的なシーンの方がより重要事項に結びつく、というそれソースあるの?と疑われるような意見もなくはないですが、もっと顕著な意見は、AIが進化しまくっているということです。
AIを駆使するためには言語化能力が必須
ChatGPT、Claude、Copilot、Gemini、その他諸々どのAIチャットも、理解力の進化は凄まじいものがあります。
ある程度のことは向こうからガンガンに空気を読んで、聞いてもいないことまで言及してくれもします。
しかし、仕事のために活用する場合は、どれだけロジカルに要望を伝えられるかが最重要になります。この際に、人間側には一定以上の言語化能力が要求されます。
よく言われることですが、AIチャットは、ゴミを入れたらゴミが返って来る、と。現在の最新バージョンでは、ゴミを入れたらハードオフのジャンク品が返って来る、くらいには進化している印象です。いや、ちょっと言い過ぎかもしれません。かなりロジカルに投げかけてもジャンク品を返されて、それを自分で修理して利用することは少なくないですね笑。
今後益々AIは進化するわけですが、人間側に自分の要望を正確にロジカルに言語化する能力がないと、あまり役に立ちません。より正確に言うと、仕事において言語化能力の高い人がAIチャットとのコミュニケーションで得ている対価を生涯得られません。「そんなの別にいらないし」と言っていられないほど、その差は激しいものであり、今後加速度的に更に激しくなります。
どうしたら言語化能力を鍛えられる?
さて、ここまでである程度は、言語化能力の重要さを説明できたかと思います。
これからのAI時代により不可欠になると同時に、結局、対人とのコミュニケーションにおいても、言語化能力の差で、得られる対価は確実に異なってきます。要望を伝える時だけでなく、交渉する際にも必要ですし、励ましたり慰めたりする際にも必要なわけです。きちんと伝えられる力がないと、常にあらゆる齟齬が生まれてしまうわけです。
では、どうしたらその力を養えるのか、ですが、簡単ではないと思います。
幼少期から読書、勉強を割と好み、思考実験を反芻し、友人や知人のざっくばらんな話しを噛み砕きながら理解するような人の中には、特に意識せずに言語化能力に秀でているタイプの人もいます。子供の頃はそうでもなかったが、社会人になって他人への説明を要求されるような仕事をこなしている内に、能力が養われた人もいます。言語化能力は高いものの、人前で話すことが不得手で、口頭だと言葉が出てこないが文面では問題ないという人もいます。
かなり悲惨なのは、本人の言語化能力は低いが、周りの理解力、包容力、忍耐力が高く、中小以下の企業の社長や役員になって、自分の言語化能力に問題がないと誤認してしまっている人です。このようなタイプの人は、残念ながら、言語化能力を向上させるきっかけに出会えないまま高齢者になっていく可能性が高いです。
一つの物差しとして、割と難易度の高い業務上の困りごとにおいて、AIチャットに質問をして、自分の質問の意図が正確に伝わらないことが続くようであれば、自分の言語化能力を疑ってもいいかもしれません(もちろん、AIが全ての質問を確実に理解できるという保証はないので、そこのさじ加減を認識できる理解力は大前提となります)。
または、そこまで親密ではないが理解力が一定以上ある友人や知人に、「正直、私の言語化能力って低い?高い?」と聞いて正直に答えてもらうという手もあるかもしれません。親密な相手だと、自分の言語化能力が低くとも相手が無意識的にそれを補っている可能性が高いので、正確な判定が行えない場合もあると思われます。
そして自分の言語化能力が低いということが判明したら、いよいよ修行開始なわけですが、前述の通り、簡単ではないと思います。
一朝一夕で養えるものではないので、できるだけ長文を読むことを心がけたり(要は読書)、「この人、難しいことを簡単に説明できる人だなー」という人の話しを何度も聞いてそのメカニズムを自分なりに解き明かしてみたり、オフラインオンライン問わず知らない人が集うコミュニティの場でいかに相手に齟齬なく話しを伝えられるかを試してみたり、と、コツコツと根気強く頑張るしかないと思われます。
何より大切なことは、俯瞰して自分の現状の言語化能力を見極められるかどうか、だと思います。言語化能力が低いにも関わらず、それを認識できていない場合にはどうすることもできないためです。
それでは皆様、これからのAI時代をより謳歌して行くために、できる限り言語化能力を向上させていきましょう!